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イベントのペーパーに書いた超SS。
我儘のお話。
王子が一行出ます。










「ネェメル、私、オ手紙ガ書イテミタイワ」
「手紙…?誰へだい、エリーゼ」
「勿論メル、貴方ヘヨ!」
「私に?」
 
きゃはっと弾けるように笑う少女人形の気まぐれはいつもの事なので、メルヒェンはちっとも動じなかった。というより、少女の小さな我儘はメルヒェンにとっては愛しいばかりなので、いつもより簡単なおねだりに拍子抜けしてすらいた。
 
「ソウシタラ、オ返事クレル?メル」
「――勿論さ、可愛いエリーゼ」
 
甘えて見上げてくる彼女に、蒼褪めた唇でにこりと笑んでみせると、エリーゼはこの上なく嬉しそうに笑った。輪郭が溶けてしまいそうなくらい白い頬が、ほの紅く染まっている。
 
何がそんなに嬉しいのだか。…分からないが、ともあれエリーゼが幸せならばメルヒェンも幸せなのである。
 
 
 早速メルは、封筒と便箋とインク、ペンを用意した。ちなみにエリーゼの矮躯には普通のペンは大きすぎる為、雪白姫の逃げ込んだ七人の小人たちの家から失敬してきたものである。
それからというもの、エリーゼは井戸の底で便箋に向かい、白い紙の上に文字を連ねていく作業に夢中になっていった。気になったメルが覗き込もうとすると、レディの手紙を盗み見るなんて、と烈火の如く怒られ、小さな掌で頬を叩かれてしまった。痛くは無いが、心に酷いダメージを受けた。
 
作業の間、そんな風にエリーゼに邪険にされ、我儘を聞くべきじゃなかったのかと悩んでいたメルの元に彼女から手紙が届いたのは、三日目の明け方の事だった。
朝になれば屍体達は墓へ戻り、メルヒェン達も井戸へ還って休息をとる。その日も井戸へと帰り、底へと辿りついたメルの所定の位置に、小さな封筒が置いてあったのである。
 
思わずエリーゼへと確かめようとしたメルだが、そこはぐっと言葉を呑み込んだ。野暮だと責められると判断したからだ。
判断は正しかったようで、何も言わずに封筒を開け始めるメルを見て、そわつきつつも知らんぷりを決め込んでいたエリーゼが満足げに笑ったのだ。
 
――しかし本当にそわそわしているのはメルヒェンの方である。
皮肉めいた言葉と余裕たっぷりの笑みで死者を操る『屍揮者』たる彼だが、しかしエリーゼの事となると、別人かと思う程に弱くなってしまうのだ。ギリギリ顔はデレないのだが、もう骨抜き状態である。
 
それほど愛しいエリーゼから、三日三晩かけて書いた手紙を渡されたのだから、喜ばない方がおかしい。
しかも、エリーゼ自身もメルに対して、愛していると宣言して憚らないのだから、手紙の内容も恐らく甘い愛の言葉で満たされていると考えて間違いないだろう。
ともすれば体外に溢れ出てしまいそうな喜びを全力で押し留めながら、メルは慎重な指さばきで封筒を開いた。
 
中から便箋を取り出して、二つ折りのそれを開く。
『私の愛しいメルへ』
幼い筆跡の宛名が見えると、メルはそれだけで大分満たされた気分になった。
 
しかし。
 
「………え、エリーゼ」
つい呟いてしまう自分を止めることは、出来なかった。


私の愛しいメルへ
 大好きなメル、私のためにお手紙セットを用意してくれてありがとう。
 ねえ、メルは覚えてるかしら、このあいだ、私とお喋りしたこと。
 甘くておいしいものが食べたいわ、って言ったら、メルったら、甘いものはよくわからないから、
 食べたいものを教えてくれ、そうしたら用意するから、だなんて。
 メルに選んでほしかったのに!
 でも折角だから、食べたいもの、書いてみたわ。
 大好きなメルと一緒に食べられるのを、楽しみにしてるわね。
 
 チョコレートクッキー・バニラマフィン・フルーツタ
 ルト ・チョコレートパフェ・チーズケーキ・ショー
 トケーキ・マドレーヌ・ミルフィーユ・(以下十数行続
 く)
         
…あなたのエリーゼより、愛を込めて』 




「王子、姫の我儘をほんの少し改善する方法は無いかな」
「ん?そうだな、ちょっと死んでもらってみるとか?」
「……」

死体じゃなかったら泣いてた。
後にメルヒェンはそう語る。






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メルエリの軽い話。
なんか自由自在にいろんな世界を行き来して王子とかともお喋りしてたら可愛いですね。

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